“恩返し”——石井大智という物語の芯
週刊ベースボールの石井大智投手の記事を読みました。

いちばん心に残ったのは「恩返しをしなければならない」 という言葉でした。
世界記録の 50試合連続無失点、防御率 0.17 という圧倒的な数字の裏側に、本人はまず 支えてくれた人たちの存在 を思い浮かべているのだと感じました。「野球人生のすべてを使って恩返ししたい」この一言に、石井投手のスタンスが凝縮されているように思います。結果よりも先に、人の顔が浮かぶ選手なのだな と。
「申し訳なかった」から始まる、もう一度の出発
御堂筋の優勝パレード。20万人のファンに囲まれたあの日、石井投手は“誇らしさ”よりも 悔しさ が勝っていたそうです。「自分の1球で日本一になれなかった。申し訳ない気持ちになりました」
この記事を読みながら、あの場面の石井投手の涙 を思い出しました。日本シリーズ第5戦、同点2ランを打たれ、マウンドで顔を上げられなかった姿です。数字は歴史に残りましたが、心の中では、このままでは申し訳ないという気持ちが強かったのだと思います。
「修行」という言葉の重さ
今年の石井投手は、インタビューの中で 「修行」 という言葉を何度も使っています。練習や鍛錬というより、生き方そのものに近い言葉 に聞こえました。
- 中学の途中で野球を離れかけたこと
- 東日本大震災で将来を考え直したこと
- 秋田工業高専で建築を学んだこと
- 再び野球に戻り、独立リーグで投げ続けた日々
- 打たれてもマウンドに立ち続けさせてもらった経験
- そして、ドラフト8位でプロに入ったこと
こうした“道のり”を思えば、修行 → 恩返し → 修行 → 恩返しというサイクルで進んできた選手なのだと感じます。恩返しは1回で終わりではなく、石井選手にとって「ずっと続いていく姿勢」そのもの なのかもしれません。
恩返しは「形」より「歩き方」
記事の最後で、石井投手はこう語っています。
「長い人生をかけて恩返しをしたい」数字や記録よりも、誰かの期待に応えたいという気持ち が、石井投手の中心にあるのだと改めて感じました。ファンとしては、また来季、あの落ち着いた表情で8回のマウンドに立つ姿が見られるのを楽しみにしています。
でもその前に、石井投手自身が納得できる“恩返しの形” を追いかけていく時間が、このオフにも繰り広げられるのかなとも思いました。
恩返しは「何をしたか」より、「どんな思いで歩き続けるか」 なのかもしれませんね。石井大智投手の“修行の続きを見届けたい”と、素直にそう思える記事でした。





