え、こんなに打っていたんですか??ーー時代を彩った“打撃に秀でた投手たち”を静かに振り返り
来季は、セ・リーグで投手が打席に立つ姿を見られる最後のシーズンになることはほぼ確実です。そう思うと、これまで当たり前のように眺めてきた「投手がバットを握る瞬間」が、急に懐かしく、そして少し特別なものに感じられてきます。そこで今日は、個人的に忘れたくないと感じている「打撃に秀でた4人の投手」 を、当時の記録をたどりながら静かに振り返ってみたいと思います。
石川雅規――24年連続安打という、もう二度と生まれない記録
まず最初に思い浮かぶのは、ヤクルト・石川雅規投手です。
2002〜2025年現在まで“24年連続安打を継続中の投手” でもあります。現代野球では、投手は打席に立つ機会そのものが減り、打撃練習すらほとんど行いません。そんな環境で、毎年のように安打を積み重ねた石川さんの“継続力”は、きっともう誰も到達できない記録です。
投げて、守って、そして静かに打つ。石川投手は、間違いなく「最後の打撃投手」 と呼びたくなる存在です。
桑田真澄――代打として送り出された、唯一のエース
「代打・桑田」。この言葉をリアルタイムで聞いたことがある方は、きっと少し胸が熱くなるのではないでしょうか。
現役時代に実際に代打として起用されたのは、彼の打撃技術と勝負強さが、当時の監督やファンに認められていたことの証明です。特に、1997年9月10日の対中日ドラゴンズ戦では、同点の延長10回に代打で登場し、プロ初となるサヨナラ打を放つという伝説的な記録を残しています。
打撃フォームの美しさ、準備の丁寧さ、そして勝負強さ。投手でありながら“打席に立つのが楽しみな選手”という希少な存在でした。
金田正一――通算38本塁打という“別格の打力”
そして、投手の打撃といえばこの人を外すことはできません。金田正一投手は 通算38本塁打(投手歴代最多) を記録した、“打てる投手”ではなく “本当に強打者だった投手” です。昭和の投手が皆打てたというわけでは決してありません。その時代を生きた人でも、「金田は特別だった」と語ります。来季、投手の打席が終わる流れの中で、この38本塁打という数字は、ますます“永久に抜かれない記録”として輝き続けるはずです。
ランディ・メッセンジャー――阪神ファンが愛した魅せる打席
そして最後に、阪神から一人だけ挙げるなら、私は迷わず ランディ・メッセンジャー を選びます。打撃成績として突出していたわけではありませんが、メッセンジャーの打席には、なぜか毎回“特別なワクワク”がありました。
- 豪快に振り抜くスイング、交流戦でのフェンス直撃二塁打、2016年には本塁打も記録しており、他にも打点を挙げるなど、投手の打撃として十分な貢献を見せました
- バットを構える姿そのものが絵になる、打つと本人もベンチも本気で喜ぶ、数字では語れないけれど、阪神ファンの記憶の中にしっかりと刻まれている投手だと思います。
こうして投手の打撃の歴史を振り返ると、阪神・才木投手や伊原投手の「絶対ホームランを打ちます」という宣言が、どこか特別な意味を帯びてきます。
投手が打席に立つ最後の1年。そして最後のロマン。2025年の野球が、また少し楽しみになりました




